生きるを手繰る

生きづらい私が、生きる気持ちをゆるりと手繰り寄せるために

「イラっ」は余裕のバロメーター

とある日のコンビニにて。

あまりパワーとやる気がなかった私は、「何でもいいから食べておいた方がいいな」と食料を適当にカゴへ突っ込む。向かったレジで、「肉も食べておこう」とチキンを追加することに。

 

店員さんは、落ち着いた雰囲気の推定20代・男性。第一印象は普通。しかしこの方、ちょっと独特な接客をする人だった。

 

「ジューシーチキン辛口を1つください」と頼んだ私に対して、
「こちらのチキン、わりと辛いのでお気をつけください」と、にこやかに気遣ってくれる。

 

お、おう。もう買っちゃったし、これから私が気をつけられることって何だろうな。手元に牛乳を用意してから食べた方がいいんだろうか。とか、一瞬のうちに色々考える。

 

そんな私に、常温のチキンをそのまま手渡そうとする彼。思わず切ない顔をしてしまう私。

 

気が付いてくれたのか、
「温めますか?」
「(ぜひ)お願いします」
のやりとり。

 

温めている間に、お会計。
「1400円ちょうどになります。…ちょうど?」とセルフツッコミを入れる店員さん。

 

たしかに端数は出てないけど、中途半端なような…と思った私は、この辺りでだいぶジワジワ来てしまって、思わず「大丈夫です。言いたいことはわかります(笑)」と返答。

 

それを聞いた彼は、にっこりしてこう言った。
「今日はいいことがありそうですね」

 

……え???何だろうこのワンダーランド。よくわからないけど、悪い気はしないぞ……
混乱とほっこりのせめぎ合いの中で、私はある事実に気が付いていた。
そう、私の背後には長蛇の列…とまではいかないけど、3、4人のお客さんが、今か今かと会計を待っている。

 

焦る私。動じることなく袋詰めする店員さん。
その後も、油が染みた包装紙のままチキンを渡されそうになり、なんとかビニール袋に入れてもらうくだりがありつつも、無事にコンビニを後にしました。

 

何というか、珍しい種類のほっこり体験でした。 
“そうじゃない”感に戸惑いつつも、優しさや温もり(チキンの温度はともかく)が感じられる接客。マニュアル重視のコンビニ界に彗星の如く現れた、規格外の接客をする店員さん。

 

できれば、これからもそのままでいてほしいと思いました。
最後のセリフは、外国の店員さんが言う"Have a nice day!"に通ずるものがあるし、あの落ち着きぶりは見習いたいほどです。
もしかしたら時々、店長に怒られたりするのかもしれないけど、そのうちマニュアル人間になっちゃったら嫌だなぁ。
ちょっとクセのある人って、どこか他人とは思えないので嫌いになれません。

 

でもそれと同時に、もし自分が違う状況に置かれていたら、きっとイラっとしていただろうとも思いました。
例えば、疲労困憊した体を引きずるように出社する途中、遅刻ギリギリで立ち寄ったコンビニだったら。チッと舌打ちはしないまでも、顔にかなりイライラが出てしまっていたと思います。

 

期待とズレた行動をする相手を、どんな時でも受け入れられるほど、私は寛容な人間ではありません。
だけど、今回イライラせずに済んだということは、最近は自分の心に少し余裕がある状態なのだと思います。調子悪いとか色々言いながらも、思っていたよりゆとりがあるみたいです。
 

もちろん、こちらのコンディションに関係なく100%イラっとする状況も多々あるわけですが、今回のように“微妙なライン”の出来事は、自分の余裕を計るバロメーターになるのかもしれないと、ふと思いました。
そして願わくば、どんな時でも予想外のことにイライラせず、ゆったり構えられる人間でありたいです。

 

ちなみに、チキンはあんまり辛くありませんでした。