生きるを手繰る

生きづらい私が、生きる気持ちをゆるりと手繰り寄せるために

花と呼吸する #文章スケッチ

文章スケッチの説明はこちらです。

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文章スケッチ
不意に受け取った小さな花束。
ロマンチックとは程遠い場所で、空いたペットボトルの中、静かに呼吸している。

 

ピンクのバラは、花芯に近づくにつれて微妙な淡さを帯びた色。ビビッドすぎない優雅な佇まい。
ほんの少し外巻きに、くるんと反った花びら。
繊細そうに見えて、つまむとしっかり厚みがあって、つるんとした感触が指に残る。

 

ベルベットのような質感のケイトウ。
鶏のトサカに似ているから「鶏頭」と呼ぶそうだ。
たしかに鶏冠にも似ているけれど、目の前のそれは、濃い赤紫の端切れに糸を通し、ぎゅっとギャザーを寄せて形づくられたように見える。
そっと指でなぞると滑らかで、思わず頬を寄せても、痛くないほど。
植物も、すっかり秋の装い。

 

そして、ピンクベージュのカーネーション。
シックな色合いのフリルが、少し大人な顔をして、幾重にも重なっている。
私の好み。

そういえば昔、こんな傘を持っていたっけ。今はもう、どこにもない。

花からは、かすかに甘い香りがする。
目を凝らすと、フリルの上で、小さな光の粒子がキラキラしている。
知らなかった。カーネーションがこんなに光っているなんて。

 

生き生きとした濃い緑は、キイチゴの葉。
ベビーハンズという種類らしい。
赤ちゃんよりもずっと大きな掌は、まるで何かを受け止めるかのように、そっと差し出されている。

 

名前のわからない他の小さな緑や、
名前のわからない薄紫の小花は、
控えめだけど、無いとなんだか締まらない。
ちょうど良いバランス。

 

華やかだけど心落ち着く、とても素敵なミニブーケ。

 

無機質な空間に息づく、生命の気配。

 

ありがとう。